2014年8月19日火曜日

うどん「日乃出」

讃岐に行った。20代、営業で月二回四国に通っていた。特に香川県は最も長く8年間担当したので、とても懐かしい。駆け出しの営業時代には時間をもてあまし、訪問先近くのお寺などを見ることもあった。国立善通寺病院の近くにあった善通寺は、とても広い境内で参拝客の少ないお寺だったが、何か心に残る雰囲気を感じた記憶がある。それで30数年ぶりに善通寺を訪れた。

全国的に今夏は異常気象だが、特に四国はスカッと晴れる日がほとんどないというか、雨ばかりらしい。いつ雨が降るかわからない蒸し暑い空気の中を境内を抜け、まずは腹ごしらえにと門前町へ歩く。ところが、人の気配がないばかりか、飲食店が見当たらない。景気が上向いていると政府は言うが、四国に限らず地方都市の活気が全く感じられない様子に将来どうなっていくか不安を感じずにはいられない。東京、大阪、京都といった大都会はいいけど、老人ばかりの地方都市はどうなっていくんだろう?。

などと考えながら、暑い中、車で通った時、「たしかこの辺にうどん屋さんがあったはず」と、行ってみると、昭和にタイムスリップしたようなうどん屋さんが一軒あった。予想どおりクーラーはなく、扇風機二台がまわっていて、先客は3人だ。冷やしうどんとちらしずしを注文する。おじいさんがうどんをゆであげて水洗いし、器に入れて氷をのせた。それをおばあさんが持ってきてくれた。そのうどん「これが本場讃岐うどんや!」というような主張の全くない、ひかえめな讃岐うどんはとても美味かった。四国に来ていた時にこちらの人も言っていたけど、本当の讃岐うどんは硬いだけではなく、モチモチしたうどんの食感が大切なんやと。

先客のおじいさんに、店のおばあさんが、「ちょうど来られたからお伝えしておきますわ。この20日で店を閉じますねん。お父さんが高校でてからやから60年やりました」とのこと。偶然にも閉店二日前に店に来たのは、何かの縁かもしれない。おばあさんの許可を得て、少し店の写真を撮らせてもらった。また一軒、この町から店がなくなると思うと、何とも言えない気持になった。

たった一回でしたが、日乃出うどんさん、60年間ありがとうございました。



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